核融合反応による新たな元素の誕生
宇宙には、ようやく(といってもあっという間ですが)陽子と中性子、さらには電子が誕生しました。
それから約3分後(つまり、宇宙誕生後からも約3分後)、水素以外の元素も誕生し始めます。
これまで陽子と中性子は、宇宙の中を単独で飛び交っているだけでしたが、宇宙の温度がしだいに10億度程度まで下がってくると、陽子と中性子同士が衝突・融合するようになりました。
これが、いわゆる「核融合反応」です。
これで、私たちがよく知る酸素や炭素といった元素が誕生していった・・・
残念ながら、そいうわけではありません。
核融合反応が起きるには、適度な温度と適度な密度が必要になります。
宇宙は時間の経過とともに、どんどん膨張を続け、空間が大きくなるに従い、温度もどんどん下がっていきました。
そのため、核融合反応が可能な温度や密度を下回る、宇宙誕生後20分が過ぎるころには、核融合反応は終わりを迎えてしまうのです。
この時点の宇宙には、水素に加え、水素の核融合反応によって生まれた、「ヘリウム」や極めてわずかな「リチウム」だけでした。
ちなみに、この後3億年程度の間、宇宙にはこれだけの元素(水素、ヘリウム、リチウム)しか存在していなかったとされています。
宇宙誕生後138億年が経っている現在、元素周期表には118個の元素が登録されています。
≪文部科学省 科学技術週間 より≫
宇宙誕生から3億年たっても、たったの3つだけの元素だったということは、とてもシンプルな宇宙だったと言えますね。
原子の誕生
核融合反応によって、宇宙に水素やヘリウムの元素が誕生しました。
これらの元素は、この時点では融合した陽子と中性子(この状態を原子核と言います)、そして電子はバラバラの状態で飛び交っていました。
・・・急に??となった方も多くいらっしゃるかもしれませんね。
これまで、何万分の1秒とかというスケールで宇宙の誕生を見てきたのに、突然38万年が経ったわけですから(笑)
これからの宇宙は、人間には途方もない単位で時間が経過していくことになります。
改めて、宇宙誕生から38万年後。
宇宙の温度が、10億度から約3000度まで下がると、電子や原子核の飛び交う速度が下がってきました。
そうすると、正(プラス)の電気を帯びる原子核と負(マイナス)の電気を帯びている電子とが、電気的に結合し、ようやく原子が誕生するようになったのです。
宇宙の晴れ上がり
原子誕生とあわせて、宇宙にはとても重要なことが起きていました。
それが「宇宙の晴れ上がり」です。
原子誕生までの宇宙は、非常に高温であったために、電子が宇宙を飛び交っていました。
核融合反応などで生じていた「光」は、この電子と衝突してしまって直進できず、そのため宇宙は霧の中のように不透明な状態にありました。
ところが、宇宙の温度が下がったことに伴い原子が誕生することによって、電子は原子核に捉えられ、自由に飛び交うことができないようになります。
これによって、宇宙から霧が晴れたように、光がまっすぐに進めるようになったのです。
これだけを見ると、「何がそんなに重要なの??」という疑問が湧いてきそうですね。
過去の宇宙の観測ができるようになった
私たち人間が、過去の宇宙のことを知るためには、天文学や物理学といった学問の進歩が不可欠ですが、過去の宇宙を直接的に観測できるとすると、それに勝るものはありませんよね。
実は、宇宙の歴史は、宇宙から降りそそぐ光で観測が可能なのです。
日常生活の中では、一瞬で移動しているように感じる光も、秒速約30万kmという限られた速度でしか動けません。
そのため、例えば地球から1億光年離れた星から届いた光は、今から1億年前にその星から放たれた光ということになります。
この光を地球から観測すれば、過去の姿(この場合は1億年前の姿)を観測できるということになるわけですね。
そのため、原理的には、この「宇宙の晴れ上がり」よりも過去の宇宙については、観測ができず、物理学などの理論を積み重ねていくことでしか「知る」ことはできませんが、これよりも未来の宇宙は、地球に降り注ぐ光を観測すれば「知る」ことができるのです。
そういった意味で、宇宙の晴れ上がりは、私たちにとってとても重要な出来事だったのです。
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